春芽がっしょうだん
春、
春分の日も近づいてきますと
ベー助君からの熱いラブコールがはじまります。
「草取りをおねがい!」
どうしても
内勤優先にしてしまうタチなので
例年のコールは日々積み重なって悲壮感が漂ってきます。
本当に申し訳ないことです。
そこで今年は春分の日前から出かけました。
するとハウスの中では、
冬芽ならぬ
春芽がっしょうだんがお出迎え!
大きく見開いた眼、
引き締まった小鼻、
何かを考える口元は、
昨夜のガサゴソと聞こえた物音に
今夜も備えているかのようです。
「きのう、たぬきが通りましよ、
あらいぐまは、奥の水辺をあるいていました」
(名探偵フ入りりガクアジサイ)
冬芽のときは、
「とげの森の顔なし」で
暗黒のいばらに 青ざめた顔を
浮き上がらせていたのですが、
春になったら、
こんなに青々と精悍な面持ちで
しかも艶々に
春の陽光を出迎えておりました。
いったいこれからどこへ向かおうとしているのか?
「カラスアゲハを待っております
この葉の照りは
彼らの光る羽になり、
空を舞い飛ぶのでございます」
(カラスアゲハとカラスザンショウの森)
丸く萌ゆる王冠のなかに
さらに春を祝う小葉が顔を出しています。
陽気にほほ笑む、
彼女の心そのままです。
そんなにうれしいのですか?
「はい いつもこの時期 わたくしは
こうして歌をうたっております」
(黄金葉あじさいの姫)
なんといっても春ですからねぇ
じつは、
わたしの透明な黄金の実も
その中の黒く硬い種も
またその中の白いナッツのような仁も
鳥のような羽状複葉の葉群れも
水のなかで泡だつサポニンも
すべてここから始まるのです
どこから?
「ここからです
ほら
瑞々しく羽を閉じた一枚からです」
(春の無患子)
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